零式艦上戦闘機計器板

                                              


計器類



「初めに」
■古い計器の注意点  放射性物質使用タイプに注意!!   注!以下個人的見解を含んでいますので参考にする方は自己責任で判断して下さい

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管理下にない放射性物質を 見つけたら - 文部科学省
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/anzenkakuho/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2013/02/08/1261275_01_1.pdf

 大戦中航空計器の文字板・針等の夜光塗料には「自発光塗料」と「畜光塗料」があり、自発光塗料には「放射性物質」が使用されています。
放射性物質の種類はラジウム226Ra,228Ra)が使用され放射線の特性を利用した自発光塗料です、逆で「畜光塗料」はその名の通り光りを貯めて一定程度の時間光る塗料です。
計器に絡むラジウムの危険性は1929年アメリカで「ラジウムダイアルペインター」(注1)と呼ばれた事例が報告されその後認識されはじめました。
その後製造時に危険性のあるラジウムからより安全な畜光塗料に使用率の変更に努めていた事が、国産計器を時系列で見ても大東亜戦争開始時を前後に伺えます。(注2)
変更がその時期に見られる理由は計器板を視認する為の操縦席内の紫外線装置の発達と畜光塗料の性能向上が推測されますが、しかし自発光塗料は非常に有用な夜光塗料であることには変
わりなく、軍に限らず身近なところでは腕時計等に戦後以降も長く使用されているぐらいで、計器の使用条件によっては上記の時期に限らず使用率の高い物があります。(米軍も同じ)
勿論現在は夜光塗料でのラジウム使用は禁止(腕時計等では)され、より安全な自発光塗料に置きかえられています。 参考資料「徳永時計開発室」

 ラジウム使用計器は状態が完璧であれば常時手元に置いておかなければ問題は無いと思われますが、状態の悪い計器、特に剥き出しの文字板等はガイガーカウンターの針がレッドゾーン一杯振り
切れる事もあり、計器の状態に大きく左右されまた分解時の危険性が認識出来ます、同じ時期の米軍の計器でもその傾向は同じで、写真の通り針が限界近くで激しく触れています・・・・
欧米の博物館では古い計器板には放射能シールがベタベタ貼られ、職員・部外からの研究者で在っても制限がされています、 日本でも将来的にはその危険性が認識される時が来ると思われ
博物館等でも保管基準が示される事となると思われます。
 しかしレッドゾーンを振り切れた計器類でも、1mも離れれば自然界と同じレベルの測定値に戻ります。(時計ケース等硝子1枚隔てただけでも測定値は下がります)
要は計器の密閉状態に大きく左右され自発光物質が剥き出しもしくは漏れる状態の物は要注意で、程度の良い物でもガラスの密閉状態・接続管の密閉の有無等に留意が必要です。
やはり機械物が好きな方はこれだけの精密機器を分解したくなるのが心情ですが、分解時のラドンガスの吸引と剥落し微細となったラジウム粉末の取り込みが最大のリスクとなる訳ですから
「分解は絶対に行わない」事が古い計器を取り扱う注意点だと考えています。(海外の博物館員から「ラジウム計器は絶対分解するな!ラドンガスもでる!」と何度もアドバイス頂いています)

 古いラジウム自発光塗料と畜光塗料の見た目の判断は色が決定的に違いますので判別付きます。
ラジウムは赤茶(経年劣化による変色と推測される)、畜光塗料は緑もしくは黄がかった白です。ただ要注意点はラジウム自発光塗料は自発光期が10年前後であり「光らないから大丈夫」と間違
って捉えられやすい点です。
光らなくても放射性物質には間違いないですから放射線の半減期は1600年です。(ラドンガスは3日程だそうです)

 此処まで書きましたが一般に計器よりもはるかに流通している高放射線の物があります、健康用品で売られているラジウムボール・ラジウム鉱石・北投石等々様々です。
一例ですがラジウムボールでも大量だと75.01μSv超えるし北投石で77.63μSv超えとなります。
また商品説明にも320μSV以上発生、放射線〜700μSv各種なんて書かれていますから旧軍計器など問題ならないレベルです。
引用元 http://www.chinaroman.com/setumei.html
これらはオークションでも気軽に手に入れる事ができる物ですから、旧軍計器の入手の難しさからすると遥かに簡単な事です。

 しかし、だからと言ってラジウム使用計器が安全と言っている訳では有りません、「分解は不可」、「破損計器は密閉処置を取る」等の基本的事項を守った上で、現日本の法制上では安全と思わ
れると言う事だけです。
 
注1 「ラジウムダイアルペインター」主に女子工員が放射性ラジウム等の自発光塗料を文字盤・針に筆で塗る作業時に、筆先を舐めて整えていた為に体内被曝が多く発生した事例。
   1929年にMartlandとHumphriesが骨肉腫の発生を報告し、その後数多くの障害が明らかにされた。    参考資料 夜光塗料による放射線がんの発生
注2 日本の航空計器で言えば16年前後を境に大幅に使用率が下げられています、用途によって針先端部もしくは重要な数値のみに限られていきます。
  17年を超えるとほぼ自発光塗料の使用率が少なくなります。
下の例は同一計器で昇降度計の時系列での変換過程です。左から14年製17年中期(推測)18年後期(推測)となっています。
(推測計器は防諜の為日付刻印が省略された為確認できないが、刻印無しの時期と戦時の計器製造工程省略個所等により大まかに判別できる)

 以下古い計器を収集・保存される場合の一知識として覚えて頂ければ幸いです。(特にお子様のいるご家庭等)
左上 海軍時計文字板、殆ど剥離していますが針は振り切れます。
右上 陸軍時計、レッドゾーンまで行きます。
左下 米軍計器、写真の通りです・・・・
右下 速度計、反応しない物質の物も在ります。(同じ型の速度計でも振り切れる物があります)


電熱ピトー管(二型)  動圧管・静圧管の配管図 
零戦等多くの機種に使用されたピトー管です。


飛燕計器板 (陸軍)
*計器板は複製計器は型式違い等代用含みます。


零式航空羅針儀二型 (海軍)
一型と違い大型です。
        


陸・海 前後傾斜計
左、陸軍 右、海軍


水平儀二型 (海軍)
左写真 左実物、右レプリカ
右写真 零戦六二型上部計器板装着検証時


零戦 水平儀二型・旋回計二型の実働

水平儀ジャイロ固定装置は不動ですがその他は生きているようです。
旋回計のジャイロも動いていますが期待していた共振音までは聞こえませんでした。

この音ですが零戦搭乗員の方から「着陸後エンジン停止した後に聞こえた」と話に聞いていました。
飛行任務の緊張とエンジンの騒音が消えた後の静寂さの中で、このジャイロ回転音だけが響き徐々に小さくなっていったと思われます。





海軍 混合比計1型指示器■米兵が零戦から外した物だそうです。(とあるコレクターの計器)
お願い。 所有されていて手放してもよい方いらっしゃいましたらご連絡頂ければ幸いです、21型の計器板実現のため必要アイテムです。
メールtaizo6@trust.ocn.ne.jp



航路計 (海軍)
右から前期・中期・後期の各タイプと思われます。
右は内部ケースも金属・中期からはエボナイト(外裏蓋金属)・後期は正面全面までもエボナイトに変わっています。



■航路計 裏
裏には本来この様なカバーが付属されていたと思われますが、残存する航路計はカバーが取り外されたものが多く見られます。



92式航空羅針儀 (海軍)
納品時の箱を改造して正面に見えるようにしたようです。本来は横向きに格納され検査成績書・説明書・付属品と共に格納されています。



九二式航空羅針儀(海軍) 零式輸送機装着タイプ
零式輸送機操縦席正面中央にフローティングされて装着されていた物です。
フローティングする為の金具が追加され、ダンミーカード廻転柄が大型の物に交換されています。



92羅針儀内部 (海軍) コンパス球体部
正面から硝子窓・羅盆・ベローズとなり、内部目盛は羅牌と当時の説明図には在ります。



陸・海 昇降度計
左、海軍昇降度計一型 右、陸軍昇降計(九五式)















零戦装着羅針儀の間違い例
■よくある一例を現物で比較します。
左がよくある間違い(零式航空羅針儀1型改1)
右が正解(92式航空羅針儀)
非常に良くできたラジコン、プラモデル・ウイングクラブのスケルトン零等々、間違った羅針儀を再現していると出来が素晴らしいだけに非常に勿体ないと計器板マニアの私としては思ってしまいます^^;
偏狭マニアの戯言ですいませんが一番の見せ場計器ですから再現して欲しい点です^^
余談で・・・私が一番最初に購入した計器は・・・・「零戦の羅針儀」と言う触れ込みで大枚はたいて購入したのが左の零式、右がその勉強の甲斐在って^^;二番目に購入した九二式羅針儀です。



陸・海、精密高度計
左、精密高度計二型改一(海軍)  右、九七式高度計(陸軍)
右の九七式はCAFにて保管されていた物です、元は捕獲機の物と考えます
左の二型改一の注目点は可動式の指針が付いている事です、この様な計器は初見です。





97式高度計 (陸軍)
とある展示会用に作成した展示台です。



燃圧計 (陸軍)
戦前の気象庁で実験に使用された器材です。



98式旋回計指示器傾斜計 (陸軍)




前後傾斜計 (陸・海)




傾斜計 (陸軍)
■入手後クリーニング・ガラス交換、銘板には陸軍☆マーク刻印がかすかに見えます。




九二式羅針儀 (海軍)
状態が悪く見える物でもクリーニングすればこの様になる場合が在ります。



九二式航空羅針儀 (海軍)
■こんな症状も在りました・・・
羅針盤が内部でネジが緩み脱落していて、程度は良いのに分解しなければいけませんでした。

■九二式によく見られる症状の羅針盤円形ガラスのパッキン劣化からの液漏れの為、分解・清掃・パッキン交換等行いました。
整備完了してしてアルコールを注入しているとボタボタと液漏れします^^;確認するとアネロイド部の真鍮蛇腹に穴が開いていました・・・・
半田で修理して今度は大丈夫でした^^




排気温度計 (海軍)
文字盤のレプリカとオリジナルとの比較です。










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