零式艦上戦闘機計器板

32・22型タイプ照準器マウント基部 作業工程



 18年末から福岡航空宇宙協会より零戦32型についての相談が在り、協会委員と話し合いを続けていたところリサーチが可能となり19年3月福岡に向った。

なお相談に至った経緯は、甘木市が新設する新大刀洗平和祈念館に32型を無償譲予定であり、再展示に合わせて補修を計画している為であった。


協会が計画している32型改修計画は「基本的に過去の復元でおかしいところは可能な範囲で直し、あとは現状維持のための補修をする予定」という点で、当方Team Zero2が過去海外で行ったリサーチの結果等を再検証して、出来うる範囲での以下2点を連絡し協会側の協議を経て協力をさせて頂くこととなった。


  (1) 機体側照準器マウント基部の約7割が欠落、しかし残存部を精査したところ32型〜22型中期の形状で在る事が判明。

  過去の調査資料から欠落部のほぼ正確な複製が可能と判断し、オリジナル部品に複製を補う形での復元・複製を目指す。


  (2) 照準器オリジナルをTeam Zero2でアメリカより入手可能となった為、レプリカ装着を中止しオリジナル装着を協会側に奨める。(既にレプリカが準備されていた)

  なお入手照準器には照準器マウントが付属していない為、国内外での入手努力を7月末までとし不可能な場合は複製を検討する。(開館に間に合わせる為に複製日数予測から逆算)






 機体側マウント基部、試作過程

  1〜4

   5〜6     試作品構成部材〜完成


     *補強材は本来の材質は鉄であるが、残存オリジナル部と接する為電解腐食を考慮しアルミに変更。

 装着部品製作
 (1)装着部品作成にあたって前回リサーチの採寸資料を精査したがどうしても寸法を出せない部分が在り、海外でのリサーチ資料と3割残存部から予測値を割り出し、下部奥行き35oを   第一候補、第二候補で40o、最悪奥行き・高さ等合わない場合を考え余裕を持たせた物と計3点を作成した。

 (どうも海外でリサーチした複製品はファイアブルにする為に、第二隔壁上部L字部のリベット前後の寸法を多く取った為??に、オリジナルと5o程違いが出ていると思われた。散々モニター

 前でトータル十時間以上悩んだ結果のオチがこれだったとは・・・・・???^^;)


 (2)更にオリジナル残存部の強度が確保できない場合で照準器をどうしても付ける結論に協会側と達した時の為に、残存部を除去して装着できる試作品(35oType)を準備した。

 (3) 照準器マウントはオリジナル通りの材質砲金(以前黄銅と書いたが×)で作成したがかなりの重量が在るため、残存マウント強度が危惧される時は少しでも軽くするために完成予定
   ではなかった練習用で作成したアルミタイプを完成させ準備した。

 (4) 照準器マウント取り付け用ネジは戦前使用と同じ、旧ピッチの物を探し出し準備。

      なお長さは15oで強度上問題無いのだが、とある現物資料から確認できた長さを算定して20oとした。(取り付け時にこの長さの意味が解る事となる)



 (5) 複製機体側マウント基部のリベット止位置は構造上通常リベットが打てない位置の為、ブラインドリベット(ステンレス)を採用することにした。

   そこでオリジナル丸頭とのギャップを埋めるため私が考案した方法は、ブラインドリベットを丸頭リベットと同じ6ミリまで旋盤で削り込、丸頭リベットの頭を残して嵌めこむ物を作成しセット
   で使用するよう考案した。(「ダミー丸頭付きブラインドリベット」と言えば良いのか?今回40セット程作成したが手間がかかるため商品で出ないかなと・・・・・・特許取りたいが絶対売れ
   ないな^^;) 

   なお組み合わせると丸頭部の厚みが増え、その点は複製の代用として適さないが、既にブラインドリベット外径を削り込んで強度が落ちている為妥協した。


     (6) 照準器マウント製作

        (かすかな望みで当てにしていた国内入手が7月末時点で不可能となってしまった為作成に踏み切る、その後フライスを初購入初使用・・・・自己流で何とかなった?)

照準器マウント
左下はオリジナル


照準器マウント製作過程 まず加工部材の歪み修正
フライス(アルミは練習)
メイン部材



側面部材切り出し
固定部品
固定部品と合わせて軸加工



固定ネジ
固定ネジロック用ナット加工
塗装(無塗装は加工不良品)



機体側マウントの装着検証(うちの見習い工員)
←技術練成後の塗装剥げ状況
(これも納められない不良品・本体2ミリ切断違い^^);

番外   4式との光学ガラス形状比較






以上今回装着に向うにあたって準備したものである。機体側マウント基部4個、照準器マウントはアルミ×1黄銅×2(予備1)、特殊リベット・旧ピッチネジ等々・・・



 修復前現状

  (1)下側のマイナスネジは非オリジナル、サイパンでの修復時の物と考えられる。その各外側に在る上下2本のせん断されたリベットがオリジナル。


 修復過程

  (1)残存部強度は在る事が確認された為当初予定通りとし、複製マウントは第一候補で問題なく装着できる事が確認された。

   まず残存部を慎重に修正し複製マウントとの整合性との確認。

    機体側マウント取り付けリベット穴を慎重に探し出し、せん断されていたリベットを抜く
基準線出しの為OHPフイルムにトレース
機体側マウント基部リベット穴をOHPフィルムでトレースし、その下に複製マウントを入れ位置決めと穴あけ。


クレコで仮止め細部位置確認 照準器マウント仮装着 細部位置確認
照準器仮装着 細部位置確認



取り付けの為の腐食除去部分塗装
残存部と複製品との上端整合性確認後加工
補強部干渉部加工、上端と合わせリタッチ



 上部通常リベット打ち (オリジナル通りで本来は補強材との
接合用)下部ブラインドリベット止。




 

欠落R部エポキシ加工(アルミパテでないのは理由在)
残存部塗装除去(除去過程で元塗装は確認できず)
丸頭がせん断されたリベット抜き・交換・打ち



ブラインドリベット、ダミー丸頭加工(エポキシ接着)
塗装・リタッチ、機体側マウント基部複製装着・復元完了
なお塗装塗り分けは今まで見てきたオリジナル塗装パターンからの推測。


合わせ面オリジナル塗装
照準器マウント装着検証
装着














照準器装着


機能確認・照準環等照射調整



完了
完了


機体での装着作業で10時間強操縦席に乗っていました^^;
内部フィルタ透明照射 クリックでYouTube動画
赤フィルタ照射 クリックでYouTube動画



左から32〜22・中島21後期と52・三菱22後期〜
取り付け基部部品一つとっても中島は生産性重視2分割構造(重くなる)・三菱は軽量重視(端材が出る)と解ります。




















 Team Zero2とはサイトAstroboy's The Zero fighter worldの零戦虫眼鏡メンバーで、零戦に関して興味ある細かい所まで探求する事を目的として彩雲・鷲・FUJII・ケンジ・A6M232のメンバーから始まった集まり(彩雲氏は故人)